彼は対戦する打者の力量なんてまるで考慮しなかった。ただ、捕手の構えるミットに目掛け渾身のストレートを投げることしか頭にない。
ある一流打者が語っていた。
「プロの打者というものは、速いだけなら目が慣れてしまえばいくらでも打てるものさ...」
確かにそうなのかもしれない。
しかし、野球フリークスの間では、ストレートだけで相手打者を牛耳ってしまう投手の出現を待望されるものなのだ。
それは “豪速球信仰” と言ってもいいかもしれない。
そんな豪速球投手のイメージをマウンド上で具体的に演じて見せた投手がいた。彼はコントロールが悪く、投手としてのテクニックも、誇張した言い方をするならば高校生並みと言ってもいい程だ。記録的にも新人王の他に見るべきものがない。
しかし、彼は現役の間、常にファンをワクワクドキドキさせ、スーパースターであり続けた。
それは、彼がケタ違いのスピード、豪速球の持ち主だったからである。
もしかしたら、全盛期の江夏豊や江川卓など、彼のストレートに匹敵する球を投げる投手はいたかもしれない。
しかし、彼の特殊性は制球力も変化球も相手打者との駆け引きもなく、そんな投球術なんぞなくとも、一流打者を抑えて魅せるぞという気概があった。
豪速球投手という自分が信じる価値を追求するために、そして、それを信奉するファンとその価値を共有するためマウンドに上がり続けたのである。
彼ほどスピードにこだわった投手はいない。彼と同等の身体能力があっても、彼ほどスピードを出そうとする投手もいなかった。
そんなスピードを失えば、マウンドを去らねばならない。
《滅びの美学》
小さな豪速球投手。
元阪急ブレーブス
“山口高投手” の非凡さを語り継ぎたい。
以上は、私の山口高投手のイメージです。
さてさて、2020プロ野球ついに昨日開幕しました。
やっぱり、夏は野球がないとダメですね。今年はどこが優勝しても良い。
単純に楽しみたい。