オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

男の道は ど根性でヤンス♪

  男の道は ど根性でヤンス♪

五郎は小柄であることを気にしていた。だからといって、人からナメられるのは御免なのだ。
根性だけは絶対誰にも負けたくない。

カラスが鳴いて♪ 夕焼けこやけ♪

今日も一日、尊敬する兄貴分ひろしと行動を共にした。
ガキ大将ゴリライモとの決闘にも一歩も引けを取らなかったぞ。
しかし、ひろしの相棒ピョン吉は、あっしに負けず劣らずの根性の持ち主。感心することしばしばだ。

今日は気張ったので疲れた...。
“ ざまあ カンカン カッパのへー!”
「あっしは 古風なんで ヤンス ネェー」


このキャラクターを憶えているだろうか? 人気漫画(アニメ) ”ど根性ガエル” で、主人公?ひろしの弟分として登場する「五郎」である。
私はこの地味?ではあるが、妙に個性的な五郎が気になって仕方がない。

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昔はどこの町内にも、五郎のようなタイプの子が必ずいたような気がする。
もう、根っからの子分キャラ。
私の少年時代にも、近所にそんな役回りの子がいた。
名前を「カズオ君(仮名)」といった。
私より学年で一つ下だったと記憶する。彼は小柄ですばしっこく、笑顔を絶やさない明るい少年だったが、舌足らずの喋り方、当時よくいた青っ洟を垂らしてはそれを袖で拭くような俗に言うハナタレ小僧。ちょっと反応が鈍いところがあり、今の時代ならイジメの対象になっているかもしれない。だが、普通にみんなと遊んでいたのだから良い時代だったのだろう。


カズオ君は学校から帰ってくると、いつも一人空き地で遊んでいた。
そして、私達グループが空き地に集まると、誘っているわけでもないのに、人懐っこい笑顔を浮かべ寄ってくる。
私達もそれ(グループに加わること)を黙認していたのだ。



「おいカズオ! パン買ってこいよ!」

温厚でやさしく、めったに怒らないカズオ君は、よくパシリ(使い走り)をやらされていたなぁ。それを嫌がらず、嬉々として受けていた。


嬉々として? 本当にそうだったのだろうか? そんな筈はないと思う...。


あの底抜けに明るい笑顔は、みんなの仲間に加わりたい、仲間外れにされたくないという思いからの、カズオ君なりの精一杯の演技だったとしたなら...。
そうだとしたらあまりにも痛々しい。
そして、私達も実はそれを薄々感じていたのかもしれない... それでも利用していたのだとしたら?


子供たちの世界は案外残酷なのだ。


カズオ君にも意外な一面があった。
普段の彼は、どんなにからかわれても、笑顔を絶やさずヘラヘラしているのだが、顔の表情を崩し急に泣き出すことが数度あった。泣き出したカズオ君は、やられても、やられても、相手に突っ掛かっていく。絶対に引かない。その気迫に、相手も最後は謝るしか方法がなかった。

あとから知ったのだが、カズオ君は母子家庭の鍵っ子。
活発だった彼は、大人しく留守番をしているようなタイプではなく、また、預かってくれるような親類もなかったようだ。複雑な家庭事情、環境...。


空き地で、ひとり遊びをしているカズオ君の後ろ姿を思い出す。。。
あの、人懐っこい笑顔にも理由があったのだろう。


ど根性ガエルの五郎からの連想で、ついカズオ君のことを思い出してしまいました。演劇的世界観からすれば、五郎もカズオ君も典型的子分キャラ。義侠心に富む五郎は、おそらく森の石松あたりがそのモデルと思われるが、カズオ君の場合は熱血漢とはちょっと違うようだ。

五郎は布製の横(肩掛け)カバンを引きずって歩いてましたよね。
私の少年時代もあのカバンでした。そして、カズオ君も五郎のように小柄だからなのか?地面ギリギリに引きずりそうなスタイルだったな。


あの頃の子供たちは、現代の部屋でゲームばかりやっている子供たちと違って、空き地や原っぱに集まることが日常だった。謂わば子供たちのコミュニティ。
今は空き地なんてあまりないですよね? 少子化もあり街には年配者ばかりが目立つようになった。

空き地に土管が置いてあり、そんな空間で子供たちは缶蹴りや三角ベースボール、忍者ごっこ等をして遊んだ。
ドラえもんサザエさんの世界ですね。ど根性ガエルも同じです。
それらのアニメが時代を超えて人気があるのは、大人もノスタルジーを感じ、子ども向けというジャンルを超えた作品だったからではないでしょうか? そんな気がします。



空き地というコミュニティで遊んでいた仲間も、中学になると、部活やらそれぞれの行動様式も異なり、新しい友達もでき疎遠になっていきました。

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カズオ君のその後...。

悲しいことに、不慮の事故で亡くなりました。
詳しいことは分かりませんが、病苦で自ら生命を絶ったというのが本当のところだそうです。
享年26才... あまりにも若い。


ところで、あの五郎はどうしているでしょうね?

男の意地を見せるでヤンス♪

なんて、元気にやっていればいいですね。