オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

一人旅のファンタジー。

てくてく てくてくと...。

オケラ街道を歩いている時のことでございます。向こうの方から見知った顔がやってきました。こいつが、ちょいと煩い、、否、面倒な要注意人物。


「へへへ、オケラ街道の旦那。来週、北海道へ旅に出るんですって?」

「・・・」

「あっしもね、ちょいと暇なもんで、ご一緒出来ねえかな?と、思いましてねぇ...」

「・・・」

「どうせ、オケラの旦那のことですから、馬を追って、札幌の競馬場が目的なんでございましょ?」


「あっしは、旅の道連れは勘弁してるんで、、独りにしてやっておくんなさい。」


「・・・ 旦那! 来週札幌開催のレース、耳寄りの情報がありまして、お役に立てると思いやすぜ...」


「それでは、先を急ぎやすんで失礼致しやす。道中ご無事で。」

「・・・」


このように、旅(旅行)っていうのは、一人旅に限りますね。
まぁ、一緒に旅に出るような親しい友も少ない私ですが、例えいても同行はご遠慮願いたい。
私にとって旅とは、競馬場と馬がセットで、一日中競馬場にいるのが基本。そして、夜はネオン街に消え、土地の名産に舌鼓を打つのが極上の楽しみ。

「せっかくここまで来たんだから、馬券だけ買ったら観光地へ行こうぜ...」

昔、グループ(4人)で京都の旅に行った時のこと。そう言って、私の行動を規制しようとした奴がいた。
これだから、旅の道連れがいると面倒くさい。
私は観光地はあまり興味がない。稀にあるところもあるが、あちこちまわるのが面倒で嫌なのだ。
旅は自由であるべきだ! グループ活動じゃあるまいし、行動規制されるのは我慢ならない。当然単独行動である。

まぁ、普通はグループで行けば、一緒に行動しようというのが当然であって、私が特殊で偏屈なのは自覚しています。だからこそ、極力、旅は一人と決めているのです。
こんな私ですから、団体での観光バス旅行なんて苦行以外の何物でもない。かつての農協団体のように、ゾロゾロと... ストレスMAXになりそう。

なんで凡人(私も凡人だが...)は、お土産屋さんが好きなのだろう?
あんなの、ちょこっと寄ればいい。

なんで、凡人は旅に出ると写真を撮りたがるのだろう?
景色や建築物はいい。集合写真嫌い!

ピース✌✌← これが赦せない(笑)。

写真撮る時のピース✌サイン。
あんな、カッコ悪いポーズ。義務教育を終えてから一度もやったことありません。あのノリが好きになれなくて、私の美意識が赦さない。

やっぱり、私は斜に構えた偏屈なひねくれ者なんですね(笑)・・・。


とは言え、旅は一人がいいと強がりを言ってみても、水戸の御老公一行の、うっかり八兵衛のような道先案内人がいれば楽しいかもしれませんね?
そして、一日の終わりに温泉に入り、なんとそこが混浴で、立ち上がる蒸気の向こうに、かげろうのお銀(由美かおる)がいたら、それもまた楽し。否、相当楽しいでしょうね(笑)。


私は基本的に、明るく健康的で清潔な観光地の大通りを大勢で闊歩するような旅には興味ないんですよ。

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つげ義春「やなぎ屋主人」より。


ちょっと暗く、危険な匂いのするような路地裏を、たった独りで、コートの襟を立て、両手をズボンのポケットに突っ込み俯き加減で徘徊する。
路地を抜けると港町があってね、粉雪がちょっとちらついている。
遠くの方に灯りが見えて、そこに行ってみると、山口いづみ似の美人女将が一人で居酒屋をやっている。

「女将さん、ぬる燗ね。肴は炙ったイカでいいよ...」

女将さんは無口で、灯りはぼんやりともっているだけ。私はそのまま、女将さんといい仲になって、そこに居着いてしまう。なんてね(笑)。
まぁ、そんな高倉健のようなわけにはいかないが、それが旅の理想ですね。


つげ義春の「やなぎ屋主人」という漫画をご存知だろうか?
そこに描かれている旅の切ない風景が、私の旅のイメージかもしれません。興味のある方は一読を。


何だかんだと、旅を感傷的に語りましたが、旅で一番感動するのは大自然の中に身を置いた時ですね。
自然は圧倒的だ! 全ての理屈がそこでは通用しない。