オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

初恋

当時、ラジオからは、バンバンの「いちご白書をもう一度」がよく流れていた記憶があり、高ニの頃だったかな?

休日の昼下がり?
昼寝から覚めトイレを済ますと、家の窓から外を覗いた。
前の通りに見覚えのある姿、、中学時代の同級生女子Sが歩いていた。

《夢にまで見たSさんである》

私は大急ぎで外に飛び出すと、自転車に跨った。
Sさんの後ろ姿を確認すると、ゆっくり、ゆっくりと... 不自然にならないよう、怪しまれないよう近付いた。

私の胸は張り裂けそうなほどドキドキしている。さて、どうやって声をかけようか? 否、声をかけることなんて出来るのだろうか?
どうせ、自転車で前を通り過ぎ、ちらっと顔を確認してそのまま声をかけられずに行ってしまうだけだろう。そうやって、後で後悔するに決まっている。私の恋路はいつもそうなのだ。強度の臆病、、ましてや、相手は恋焦がれ夢にまで見たSさんなのである。

私は緊張した。
自転車はSのすぐ近くまで迫っている。一旦、速度を落とし横道に逸れながら距離を置いた。

“ Sは、なぜこんな所を歩いているのだろうか? 卒業名簿に記載されている住所は隣町だったような?... ”

私の頭の中は混乱していた。
スマートに声をかけられるはずがない。どうせ、緊張で顔を真っ赤にして「こ、こ、こ、こんちは!」なんて、吃ってしまうに決まっている。そして、言葉が続かず「じゃあ!」なんて言いながら、自転車でピュウ~っと、去って行く自分の後ろ姿が容易に想像出来る。そうなったら、変態決定!で気持ち悪がられるだろうな...。
想像しただけで舌噛んで死にたくなるほど絶望的に恥ずかしい。

色々な思いが頭の中を交錯する。
顔を確認したら、そのまま黙って行ってしまおうか...なんて弱気になる。

待てよ!
気付かれて「あれ?」なんて、逆に声を掛けられたらどうしよう?
偶然を装わなきゃ怪しく思われるぞ。
(実際は、Sがこの辺りを歩いている方がおかしいのだが...)

負の妄想が広がる。
思考回路ショート寸前である。

私は自転車でSの前を通ろうと決心した。もう、どうにでもなれ!

ドキ ドキ ドキ ドキ ...。

Sの横をゆっくり通り過ぎ、ちらっと振り返ると、まともに目が合った。

そこにいるのはSではなかった。


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これは初恋の思い出です。

Sとは同じ中学で、三年間同じクラス(クラス替えはなかった)、同じ陸上部でした。
中学時代は意識しませんでした。だから、普通に話していましたよ。
卒業して会えなくなると、好きだったことに気が付いて、その思いがどんどん膨らんでいったのです。

恋というものは、そういうもんではないでしょうか?

夢に出てくるほど恋焦がれ、そういう気持ちが、ちょっと似ている女の人を見ると、振り向いたり、追ってしまうことしばしばでした。
ストーカーじゃないですよ!
恋は盲目って言うじゃないですか(笑)


小学校低学年の頃から、クラスに一人二人は “いいなぁ~ かわいいなぁ~ ” と思う女の子はいましたが、本当に好きになったのはSさんが最初だったと思います。
思い切って思いを伝えようと電話したこともありました。生憎留守で、私も名乗りませんでしたが...。
恥ずかしい話しですが、当時のフォークソングを聞いては泣きそうになっていた程です。


その後、二十歳頃かな?
Sさんとはクラス会で会う機会がありました。普段の私は同窓会とかクラス会の類には、絶対出席しない男なのですが、Sさんに会いたいばかりに。
その時は、遠くから眺めているだけで話すチャンスはありませんでしたね。

あれから40年以上。

どうしているんだろうな?