オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

本能寺炎上! 黒い巨人あらわる。

炎上する本能寺。

その炎の中から飛び出して来たのは、鬼神のような黒く大きな影だ。

「うおおおおおお!」

黒い巨人は、悪魔のような叫び声をあげながら、本能寺を包囲する明智勢に襲い掛かってくる。
その形相に恐れをなした光秀の臣下たちは、腰を抜かさんばかりに驚きのけぞるのだった。


「うわああ! なんだ、バケモノか?」


巨人の相貌は怒りと恐怖?とで打ち震えている。まるで阿修羅、鬼神、魔神の如く、明智勢を食い殺さんばかり。


「ええい! 此奴(こやつ)は、ヒトではないっ! 放っておけい。」


黒い巨人は本能寺を抜け出すと、そのまま駆け抜け森の奥深くに逃走。闇の中に身を潜めたという。

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《当然ながら、以上は私の妄想、幻想です。誰も見ていないのだから...》

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本能寺から逃走した黒い巨人は、名を「弥助」という。
弥助、、勿論、本名ではない。
ヨーロッパ宣教師所有の奴隷?で、 信長への献上品として日本ヘ連れてこられたと伝えられる。

弥助のはっきりした出自は不明である。自ら志願して伴天連の召使いになったのか? それとも平和に暮らしていた故郷(モザンビーク)から連れ去られてきたのか?定かではない。
信長は彼の黒く大きな身体に大変関心を寄せ、気に入ると「弥助」と名付け正式に武士の身分を与え、家臣として召し抱えたそうである。


そういえば、NHK大河ドラマ麒麟がくる」にて、もうすぐ本能寺の変が迫っていますね。

信長はなぜ殺されたのか?
その黒幕は?
その他 “本能寺の変” にまつわる多くの謎が残されており、歴史学者や作家から検証されてきました。


そんなことはどうでもいい!
私は織田信長が大嫌いなのだ。


私の敬愛する作家、藤沢周平はエッセイの中でこう述べている。

「(信長を)嫌いになった理由はたくさんあるけれども、それをいちいち書く必要はなく、信長が行った殺戮ひとつをあげれば足りるように思う」

その通りだと思う。

信長が後世に残した功績を評価する向きもあるが、彼が行った数々のジェノサイドは悪魔の所為にほかならない。

藤沢周平氏は続けてこう述べている。

「虐殺されたのは、戦力的に無力な者たちだった。これをあえて殺した信長の側にも理屈はあっただろうが...
(中略)
こうした殺戮を戦国という時代のせいにすることは出来ないだろう。ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺、カンボジアにおける自国民大虐殺。殺す者は、時代を問わずいつでも殺すのである。しかも信長にしろ、ヒットラーにしろ、あるいはポル・ポトの政府にしろ、無力な者を殺す行為をささえる思想、あるいは使命感といったものを持っていたと思われるところが厄介なところである。権力者にこういう出方をされては、庶民はたまったものではない」


シリアル・キラー信長は、サイコ・パスではないだろうか?

本能寺での織田信長の最期。
あれは歴史の必然。
天罰だと私は思っている。


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話を弥助に戻そうと思う。

本能寺の変

弥助もその日、本能寺に宿泊しており、明智光秀の襲撃、その異変を信長の跡継ぎ信忠に知らせるため二条城に走り、信忠を守るため明智軍と戦った末に投降し捕縛される。
光秀に情けをかけられたのか? 弥助は処刑されず、南蛮寺に送られ一命を取り留めたと伝えられる...。

本当だろうか?

その後、弥助の消息は資料に残されておらず不明だという。

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ここで私は考える。

弥助が自ら志願してキリシタンになり、何か意図があって日本へ連れて来られたのなら?
彼がそれに使命感を持っていたのだとすれば? 私は同情しない。

違うでしょうね?
モザンビークの歴史を調べてみると、彼が伴天連の奴隷であって、信長のもとに売られた可能性は極めて高い。

日本での弥助を、その信長に対する忠義心を美談として語る人は多い。

そんなバカな話はないだろう?

彼にそんな日本的心情、センチメンタリティがあったとは思えない。
後世研究家の都合のいい解釈だ。
心は遠く故郷にあったはずだ。

アレックス・ヘイリー原作の小説『ルーツ』(後にテレビドラマになる)を思い出す。

私は弥助が不憫でならない。


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ここで、冒頭の本能寺炎上。
妄想の続き。

「此奴(こやつ)はヒトではない、放っておけい!」


黒い巨人は、本能寺を抜け出すと、そのまま走った。
走って、走って、、森?山? の奥に身を隠したのだ。


もう、弥助ではない。
おれは自由の身になったのだ...。


その後、本能寺周辺では、バケモノを見た、もののけを見た、という目撃情報が相次いだという。

なんでも、全身が炭で塗ったように黒く、見上げるような巨人だったという。そして、夜な夜な泣いているらしいのだ。

黒い巨人は、遠くアフリカ、モザンビークの自然の中を走リまわっていた頃を思い出していた。
懐かしい故郷。
父や母、、ファミリーのことを思っては、満月に向かって慟哭するのであった。