オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

『お帰り寅さん』巡礼の旅。

車寅次郎が帰ってきた。

懐かしい、、あの四角い顔に細い目。
しかし、それは残像だった。


私が(映画版)寅さんと出会ったのは11才の時でした。寅さん演じる渥美清さんが亡くなったのは1996年。私は38才になっていた。

寅さんがいた時代。
思い返すと、あれは夢を見ていたんじゃないだろうか? と、思うことがあるんですよね。


『お帰り寅さん』

1995公開「寅次郎 紅の花」以来、実に24年ぶりに寅さんがスクリーンに帰ってきた。

冒頭の桑田佳祐歌う「男はつらいよ」主題歌。賛否両論ありますが、私はこの段階でうるっときました。
さくら、ひろし、甥っ子のみつお...。
懐かしい面々。
その中に、相変わらず寺男を演っている、源ちゃんこと佐藤蛾次郎さんの姿を確認した時は胸が熱くなりました。


う~~ん...。

もう寅さんはいないのだと再認識させられる。

スクリーンを通して、寅さんの魂への巡礼の旅に出掛けているような錯覚に陥る。

寅さんの魂に触れているとはいえ、決して厳かな気分にはならない。
何たって、日本一楽しく面白く賑やかなおじさんだったのだ。

そして、日本一のアウトサイダー

しかし、在りし日々の寅さんを思い出す時、その姿が滑稽であればある程、なぜか胸が締め付けられるのです。

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シリーズ50周年記念『お帰り寅さん』

映画の内容に関しては、余計な批評は控えようと思っています。

疑問(不満)点は多々ありますが、ファンそれぞれの思いもあるでしょう。この映画を通して寅さんを思い出すことに意義があると思うからです。

それにしても24年ぶり?の「とらや」の面々。さくら、ひろし、源ちゃんも歳をとったなぁ...。
そして、おいちゃん、おばちゃん、先代の御前様、タコ社長の姿はない。

映画の中では、寅さんの生死は明らかにされていない。
仏壇の、おいちゃん、おばちゃんの写真の横には、寅さんのそれは並んでいない。

「夏になったら鳴きながら、必ず帰ってくるあのツバクロさえも、何かを境にぱったり 姿を見せなくなる事だって、あるんだぜ」

これは、寅さんの有名な(捨て)台詞ですが、登場人物は未だ寅さんはどこか旅をしていると思いたいのだろう。
しかし、その回顧する表情から寅さんはもういないと、悟っているようだ。
皆、心の中で寅さんのゴーストと会話しているように思える。


なぜ、寅さんを観ると懐かしい気持ちになるんでしょうね?

多分、寅さんと、その周囲の面々を見て、今は亡き自分が出会った人たちを思い出すからなのかもしれません。

“ こんな人がいたなぁ... ” と。 


渥美清さんが亡くなり、寅さんシリーズも「紅の花」を最後に終了すると、その後の「とらや」はどうなったのだろうか? 山田洋次監督には、とらやを舞台に新作を撮ってもらいたい。と、ずっと思っていました。
しかし、それが実際に実現してしまうと、ファンとは勝手なもので、自分が想像するその後とは異なものになってしまいました。
ファンそれぞれの「その後のとらや」があり、その想像力に任せてもよかったのではないか?
という矛盾した気持ちもあります。


いつかおまえの よろこぶような♪
  偉い兄貴に なりたくて♪

果たして寅さんは、偉い兄貴になれたのでしょうか?


寅さんが我々に啓蒙していたのは?


Love&Peace&Freedom


であったと思います。


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今週 3/20(土) 18:00~

BSテレ東開局20周年特別企画 春だ!さくらだ!寅さんまつり


そして、翌 3/21(日) 19:00~

『お帰り寅さん』


放送されます。

興味のある方は是非。
寅さんに会いましょう。