風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋(いか)ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
(中略)
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
私が好きだった俳優、田中邦衛さんが死んじゃったよ...。
どうですか?
上記、有名な詩、宮沢賢治「雨ニモマケズ」を読むと田中邦衛さんが思い浮かばないですか?
私は基本的に “照れの精神” がない人は信用しないんですよね。
実直でシャイ(照れ)、口を尖らせて朴訥と喋る邦衛さんの語り口がたまらなく好きでした。
人間の表情で一番美しいのは、照れくさそうな笑顔。
田中邦衛さんほど、そんな笑顔が似合う俳優さんは他にいない。
「冗談じゃねえよぉ~」
と、口を尖らせて喋る姿はどう見ても “ひょっとこ” ですよね(笑)?
田中邦衛さんは、絶対に胸を張って堂々とは歩かないでしょうね?
ちょっと俯き加減で、背中を丸めて、ポケットに手を突っ込みながら歩く。否々、そういうイメージがあります。
普通なら、そんなおじさんは風采の上がらない男に見られがちですが、邦衛さんは結構シャレている。決して野暮ったくなく垢抜けている。
日本的な性格?ではあっても、洋風な感じがする。
実写版「ルパン三世」で、次元大介を演じているように、何となくルパンの世界観と調和する(私の主観です)。
あの不器用?な田中邦衛さんのスタイリッシュさは、どこから来るんでしょうね? 饒舌な言葉ではなく、表情や動作にその秘密があるのかもしれませんね。
そういえば、田中邦衛さんは享年88才だったという。これは、あの “笠智衆” さんと同じなのだ。
日本的な佇まいの笠智衆さん、ちょっぴり洋風な田中邦衛さん。
常におじいさんであった笠さん、常に若々しい?イメージがあった邦衛さん。タイプは一見正反対であったが、私は共通するものを感じるのです。
自信を持って生きている人なんて稀なのだ。人は誰もが心の何処かにコンプレックスを持っている。
不器用ながらも朴訥と真面目に一生懸命生きている姿に、人々は胸を打たれるのだ。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ...
田中邦衛さん、大好きでした。
さびしいけれど、安らかにお眠り下さい。ありがとうございました。