オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

呑みレポ「仏像大暴れ!」

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先週の土曜日。

日暮れ時の雑踏を歩いていた。
赤提灯から、焼き鳥を焼く扇情的な匂いが鼻孔をかすめる。
それに誘われるまま、私は暖簾を潜った。この店も久しぶりだ...。

「どうも!」

「久しぶりですね!」

コワモテのマスターが黙々と仕事をしている。女将さんが愛想笑いを向ける。

「瓶ビール下さい。それからモツの煮込みね」

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この店のことは、このブログでも何度か書いているが、煮込みが実にうまい。

私は血糖値が高い。
麦酒や和酒は極力避けているのだが、たまの外飲みだ、今日ぐらいはいいだろう。明日からまた節制すればいいからだ。

「健康を祈って乾杯し、健康を損ねる」

そんな、誰かの名言があったな?

麦酒が胃を刺激する。
《 腹が減った...》

「すいませーん! レバーと、、それからボンジリを2本ずつ。塩でね」

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どーすんだよ! これ。

煮込みに焼き鳥4本を麦酒で流し込む愚かなる飲み助。
健康体ならば、このぐらいは微々たるもんで、序の口であるのだが、私は糖尿病なのだ。また血糖値が上がりまずいことになるぞ。 まぁ、今日はいいか...

でもなぁ、、、

池袋文芸座で『聖なる酔っぱらいの伝説』という映画を観たことがある。どういう話だったのか? 内容は覚えていない。

聖なる酔っ払い?

違うな、私は絶対に莫迦なのだろう。



あとから入ってきた、肥満気味で仏像に似たオヤジが、生ビールと煮込みを注文している。この店の売りはモツ煮込みなのだ。

仏像は生ビールをグビグビ呷る。


本来、麦酒なんて、ああやってゴクゴク喉を鳴らして飲むものなのだ。
そんな仏像の飲みっぷりを横目に感心している私は、麦酒をちびちびと愛おしげに飲んでいる。
そろそろ、麦酒がなくなりそうだ。
麦酒と和酒は糖尿にはよくないそうだ。これでやめようか、それとも焼酎は良い?らしいので、烏龍割かお湯割りにしようか考える。

その時、横の仏像が動いた。

「え~~と、ネギマ、レバー、ツクネをタレで2本ずつ。それから、タン、ハツ、砂肝を塩で2本ずつ。あ、生ビールもおかわりね。」

一人で12本かい!?
そんなんだから肥えるんだぞ。
食いすぎだろがっっ!
糖尿病になっても知らねーぞ。

私はネギ焼きか椎茸焼きを追加しようかどうか考えているのに、この仏像ときたら、無遠慮に肉を食いまくっている。

お! また喉鳴らして飲んでやがる。


私のビール瓶の中が空になったようだ。
お湯割りでも頼むか...。


「すいませーん! 八海山下さい」


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ビューティフル!
見事な表面張力である。

やっちゃったよ... 禁断の和酒。



「お前はなぜそんなに酒を飲むのだ?」

「忘れるためさ」

「何を忘れたいのだ?」

「忘れたよ そんなことは」

そんな酒に関するジョークが頭を過る。


自分の健康状態や懐具合が気になるのは、最初の一杯だけなのだ。
 
  私は莫迦なのだと確信する。


美味しい
 美味しい
  美味しい。

私はこの八海山が大好きなのだ。
この店に来ると、必ず頼むのがこの酒とモツ煮込み。
この店との付き合いは長く、20年近くなるんじゃないかな? 最初は今は無きレバ刺しが目的で通っていた。ここのレバ刺し旨かったなぁ~ もう一度食べたい。

シミジミと独飲しながら、私はスマホで明日のエリザベス女王杯の情報を眺めている。レイパパレという馬の母系にロマンを感じ、この馬を固定にして、馬単を数点流してみようかと考えている。
(結果はアカイイトの優勝でした)



再び横の仏像が地響きを立てた。

「あ、マスター、ビールおかわり。カキフライももらおうかな、タルタルソース付きで。肉豆腐も下さい」


自分がまだ身体のことなんて気にせず、自由に飲み食いしていたころは、この仏像と同じだったのだろうな?
下手すると、帰りにラーメンを食べて、更にコンビニに寄りアイスクリームを買って自宅で食べた。

この仏像は私と同年代かやや下かな?
きっと、そのうち病気になるぞ...。

そんなことを考えながら、八海山が美味しくて、おかわりしたくなる。
目の前の焼き鳥は食べ尽くし、煮込みの豆腐が僅かに残っているだけ。

「あの... シロをタレで2本下さい」

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どんなもんだい!
アルコールが少し入ったので気が大きくなっちゃったもんね。

焼き鳥のタレは糖分が多く厳禁なんだぜ。私は莫迦なのだ。

リンカーンの言葉にあったね?
「酒の害は酒が毒だからでなく、すばらしいが故につい飲み過ぎるからだ」

まだ全然飲み過ぎてはいない。
店も混んで来たので、八海山のおかわりは控えて帰ろう。

横にちらっと目を向けると、仏像が大暴れしている。
ジョッキのビールを呷り、タルタルソースの付いたカキフライをパクパク喰らい、尚もビールをおかわりしそうだ。

健康って素晴らしい。そして、一生懸命に生きているんだろうな。
私はそんな仏像さんに好感を持った。同時に滑稽で哀しくもある。

私は席を立った。

「おあいそ、お願いしまーす!」

これ以上、飲みすぎてはまずい。

さて、部屋に戻って飲もう。

 ・・・・・・・・・・・・

ん! まだ飲むのかって.?

だって。

ビンビール一本
八海山一杯
モツ煮込み
レバー、ボンジリ 塩各,2本
シロ タレ 2本

これだけだからね。

まるで、パリ・コレクションのモデル並みの極少飲酒。

そんな私より、あの、大暴れしていた仏像さんが正常なのです。

では。