オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

墓地からの使者。

 

死して埋葬された女の体内には子が宿っていた。生命力強い胎児は母の腹を突き破ると墓から脱出するというゲゲゲな行動に出た。
新生児の両親は既に病死しているが、
たった一人で野に放たれた子を案じたのか? 父の左目に魂が宿る。左目はポロリと抜け落ちると独自の意思を持ち手足が生えてくるのであった。

こうして、目玉の妖怪と墓場小僧の旅は始まった。文鳥程に小さな目玉妖怪は茶碗風呂が大好きである。異形の父子は何が目的で蘇ったのか? 目玉は小僧に過去を語ることは少ない。

「おまえの先祖は幽霊族じゃ、幽霊族の男と人間の女との混血として生まれたのがおまえじゃ!」

幽霊族とは人類以前に栄えていた種族で死霊の類とは異にする。争いを好まず人類が誕生すると迫害を受け地下奥に追いやられたのだ。

「幽霊族を滅ぼしたのは人間じゃ、なのにおまえは何故その味方をする?」

大村益次郎のようにデコが広い、和装老人姿をしている魔物(ぬらりひょん)がそう非難した。

因みに、目玉妖怪の妻、墓場小僧の母の名を「岩子」という。あのお岩さんこと、田宮岩の親族に当たると言う。

 


『墓場の鬼太郎』の真実を初めて知ったのは中学生の頃だったかな?
当時、少なからずショックはあったと記憶するのです。真の原作者は伊藤正美という方の紙芝居作品(ハカバキタロー)らしいが、伊藤氏の了承を得てオリジナル作品として蘇らせた墓場の鬼太郎は何処か暗く薄気味悪い物語だ。

水木しげる先生は深い。

それは戦争体験によるところが大きいのでしょうね。
水木さんの作品には常に反戦と文明批判というテーマがありました。

「戦争って怖いではなく、戦争は本当にダメだ」

そう仰ってました。


そんな墓場の鬼太郎も、アニメ化を機に『ゲゲゲの鬼太郎』となってそのビジュアルは激しく変化していく。

美少年の鬼太郎は気持ち悪いだろ?

何! あの「猫娘」は?
モデルのようにスタイルが良く、私が毛嫌いするロリ萌娘のよう。

普段の「ろくろ首」は最新のファッションに身を包み、スマホを片手に語尾上がりの女子高生言葉。

水木先生はどう思っていたのだろう?

あちゃ~! お金儲けが好きらしい。

当たり前ですよね。

私だって “give me money ”ですもん。


鬼太郎は水木しげるさんの描いたオリジナル民俗社会に存在する妖怪ではありますが、闇というか閉鎖社会の中で不気味に生き残ってほしい。
人気作品となってトレンドになると、マスメディアを中心とする商売人がアホみたいに手を加えカリカチュアライズされ妖怪も世俗にまみれる。


ゲッ ゲッ ゲゲゲのゲー
 朝は 寝床で グーグーグー♪
たのしいな たのしいな
 おばけにゃ学校も ♫
しけんも なんにもない