オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

おれは菜食主義者になる!(嘘)

https://okeraman.hatenablog.com/entry/2020/12/11/063225

健康診断。


 以前。
「健康診断」の題で書きました。

ちょいとまずい数値...。

私は自分自身に弱い性格ですが、結果が出たんじゃしょうがない。
やる時はやる!
そういう時は徹底してやります。

おれは、ベジタリアンになる!

ベジタリアンという言葉の響きはかっこ悪いですね?
おれは菜食主義者になってみせる。



キラー・コワルスキーというプロレスラーをご存知でしょうか?

ニックネームは「殺人狂」
これ、現代ではNGですよね?

プロレスにおけるニードロップという技は、現代では有り触れたベタな技だと思われがちですが、実はこんな単純な技こそ意外と危険であり、ニードロップの使い手といえば、キラー・コワルスキーが有名なのです。

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怪力ユーコン・エリックとの試合で惨劇は起こりました。

コワルスキーはコーナーポストに駆け上がると、怪鳥のように飛び上がり鋭利な刃物のようなニードロップを炸裂させました。受けどころが悪かったのでしょうか? それはエリックの左耳を直撃したのです。

血のマット上にエリックの耳が肉片となり落ち、それが生き物のようにピクピク動いていた...。
そしてエリックは、その後ノイローゼに陥りピストル自殺。
それ以来、コワルスキーは肉を見るとリングに転がる血塗れの耳を思い出し、肉が食べられなくなり、徹底した菜食主義になったという。

このプロレス界でも有名な耳削ぎ事件は、アングルではないか? とも言われており、実際には、エリックが自殺したのは事故から10数年たってから離婚したときのこと。当のコワルスキーも、菜食主義は健康のためで耳削ぎ事件とは関係ないと語っている。


あの・・・。

コワルスキーと、私の菜食主義者宣言は関係ないですからね。
ベジタリアン = 菜食主義者 = キラー・コワルスキーとの連想からわざとふざけて書いただけであって、私の菜食主義者宣言も本気にしないで下さいよ。

植物の葉っぱや茎や根っこだけを食って、どうやって生きていくんですか?
ふざけちゃいけない!
食の楽しみは人生で一番大事です。

でもねぇ、、今までの食生活を続ければ、とんでもないないことになることは容易に想像出来る。
だって、醤油だらけ、塩だらけ、マヨネーズだらけの塩分大王。
競馬中継、DVDで映画観賞しながら、ビールやコーラを飲み、ポテトチップス一袋、みたらし団子数本なんて日常茶飯事でしたからね。

そんな至上の時間はやめました。

マヨネーズ断ち
ポテチ等のお菓子断ち
コーラ等の炭酸飲料断ち
ブラック以外の缶コーヒー断ち
炭水化物である米は日に1杯
(うどんもダメらしい)
その他、色々自分に課しています。

野菜を中心に青魚や豆がいいらしい。
おれはポパイか?と思うほど、ホウレン草ばかり食ってる(笑)。
肉は脂身じゃなければいいんだってさ。勿論、食べ過ぎはダメ。
揚げ物は極力避けよう、、でも、トンカツは美味いから少しなら...
ラーメン、ライスカレー、餃子等々。

う~~ん...。
考えるとツライ。

私は徹底的にやる性格ですが、ストレスになるのもよくない。
月に一度ぐらいは飲みに行きますよ。
当たり前じゃないですか(笑)。

食生活の改善。

ダイエットで悩んでいる人は、私の周囲にも結構いますが甘いんですよ。
簡単ですよ! 野菜中心の食生活、腹八分目で運動すれば100%痩せます。

運動もやってます。
ウォーキングとストレッチ。
これは効果がある。おかげで身体に柔軟性が蘇りつつあります。

まぁ、とにかく、歳をとったら食生活は考えた方がいいと思います。
還暦過ぎというより、50を過ぎたら無茶をしないように。

そうじゃないと、そこのアナタ、病気になりますよ。死んじゃうよ。
本当だよ! 冗談ではありません。


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以上。
今年初のブログでした。

世間では新型コロナウィルス騒動で大変なことになっていますが、健康第一で今年はやっていこうと思います。

しばらく、ステイホーム期間が続きそうですね。まだ、当分、このブログは続けていくことになりそうです。

今年も宜しくお願いします。

オグリコールの夜、怪人二十面相に出会った。

1990年12月23日、第35回有馬記念

オグリキャップ、復活のラストラン!

その後のオグリコール。

その日の夜、私は怪人二十面相に出会った。


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今更、オグリキャップの物語について、ここで事細かく説明、振り返る必要はないと思う。

オグリキャップは強い!
素人が視覚的に見ても、その瞬発力といったら異次元の走り、、背筋が凍りつき恐怖感がわくほどでした。

32戦 22勝 2着6回 3着1回 着外3回
(笠松競馬時代含)

32戦... 現代と比すれば多いが、当時においては特別多いとは思えない。
しかし、問題はその内容。
オグリの走ったレースは常にタフなものであった。
その相手も、世界のホーリックスをはじめ、タマモクロスシリウスシンボリスーパークリークイナリワンサッカーボーイ、女傑ロジータバンブーメモリーオサイチジョージヤエノムテキメジロライアン、ホワイトストーン 等々。他にも油断ならない相手は数多かった。

3歳時は地方時代から10戦も走り、古馬になってからも、2週連続でG1を走らされたり、、滅茶苦茶なローテーション。競馬におけるローテーションは最も大切な要素のひとつ。
それによって、個体差はあるにせよ、馬体に及ぼす影響度が全然違うのだ。

先だって引退したアーモンドアイのローテと比較してほしい。
いかに彼女が大切にされ、恵まれた環境で競争生活を送っていたのか?を。
謂わば、アーモンドアイは豪華なドレスを身に纏い、ずっとレッドカーペットの上を歩んできた。
それに比べ、オグリキャップは地方から上京してきた垢抜けぬ地味な男。
人間社会に例えるなら、オグリのような冴えない庶民男子は、アーモンドアイのような貴族的女子に歯牙にもかけてもらえないだろう。


あの日、オグリは疲れていた。

それも、限界を超えるほどに。
歴戦の疲労で、目に見えない馬体へのダメージが近走から窺える。


私は中山競馬場には行けず、自宅でテレビ観戦していた。
大方のファンと同様、オグリの復活なんて夢にも思わず、一時代を築いたオグリのラストランを静かに見守りたい心境だった。
あの時は確か、私は大川慶次郎さんのようにメジロライアンを応援していたと思う。馬券はアルダンとの両メジロを中心に買っていたと記憶する。


オグリ1着!
 オグリ1着!
  オグリ1着!
   オグリ1着!
右手を挙げた武豊
 見事に引退レース、
  引退の花道を飾りました!
   スーパーホースです!
    オグリキャップです! 
(フジテレビ実況、大川和彦アナ)

それだけでも信じられないのに、スタンドからは自然発生的に。

オグリ! オグリ! オグリ!
 オグリ! オグリ! オグリ!
  オグリ! オグリ! オグリ!

オグリコールが発生した。こんな光景は見たことがない。
日本競馬史上、最も感動的でファンタスティックな夢のような瞬間。

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いやぁ~! あれには本当に参りましたね。当時、特別オグリファンというわけではなかったが、鳥肌が立ちました。こんな経験は、77年 TTG決戦、83年 ミスターシービー&吉永正人ダービー制覇以来、、否、それ以上?別種の感動がありました。

全身に震えがくるような感動。
私は異様な高揚感を覚え、いても立ってもいられず部屋を飛び出し酒場の暖簾をくぐりたい衝動に駆られた。
酒を飲まずには収まらない。そんな心境だった。

「ちょっと出てくる。めしは済ましてくるから...」

当時私は結婚していたのだが、この時は既に離婚が決まっており、翌年の春までに家を出て行くだろう。
気のない返事をする妻。
まだ幼い娘の様子を見ると、ポカーンとした表情で私を見ている。

それでも私は、オグリラストランの余韻から、酒を求めて街中へと繰り出さざるを得なかった。
(家飲みでは妻子の目に耐えられない)

どこをどう彷徨ったのだろうか?
はっきり憶えてはいないのだが、このオグリラストランの感動を誰かと共有したい気分だった。
かといって、私の周囲に馬券的興味のある友人はいても、感動を語り合うほど熱心な競馬ファンはいない。
現在なら、SNSでいくらでも感動を共有出来る人はいる。
しかし、当時はバブル景気時とはいえ、インターネットどころか、未だ携帯電話(ガラケー)さえない時代でしたからね。

あまり酔ってしまうと、帰ってから妻の冷たい視線がこわい。
それ以上に幼い娘の視線が、、その無邪気な笑顔が悲しい。
ほろ酔い状態で帰ろうと思い酒場を出た。時はクリスマス・イブ前夜。

街にはクリスマスソングが溢れていたような気がする。
何かの店の前では、サンタクロースの扮装をしたサンドイッチマンがおどけている。

“ 明日は娘と過ごす最後のクリスマス・イブだな... ”

オグリキャップへの思いから酒を飲みに来たのに、酔うほどにその思いは、オグリから娘への思いに変わる。

そうなることは、最初から分かっていたのだ。

さて、明日の夜はケーキを買って、娘にはどんなプレゼントを買って来ようか? そればかりが頭にある。

背後を振り返ると、さっきのサンタクロースのサンドイッチマンが、こちらをジッと見ているような気がした。
私もサンタクロースになって、娘を喜ばせてあげたい。
怪人二十面相のように変装がうまくなれたらいいのにと思う。

ふと、あのサンドイッチマンは、サンタクロースに化けた怪人二十面相ではないだろうか?
そして、それは私自身の姿ではないのか? そんなバカげた空想にふける。
私は怪人二十面相に憧れていたのだ。

オグリキャップのラストランを思い出す時、その夜、怪人二十面相に出会った(笑)ことも思い出す。

あの幼かった娘も36才?になる。
オグリキャップが走った競馬場が遠くになるのも無理はない。


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オグリキャップラストラン。
その後に起こるオグリコール。

何よりも素晴らしかったのは、鞍上には、当時大人気であった武豊が跨っていたにもかかわらず、ファンはジョッキーコールではなく、オグリ!オグリ!オグリ!と、オグリキャップの名を叫んだこと。武豊さえ脇役にさせてしまうオグリキャップ

あの瞬間こそ日本競馬史における至上の時です。
もうあの美しい光景は戻らない、オグリキャップと共に永遠に過ぎ去った美しい世界でした。

大宮の夜は更ける。星降る街角

https://okeraman.hatenablog.com/entry/2020/12/19/011546

前回の「大宮の夜は更ける。カニクリームコロッケの誘惑」からの続き。



青江三奈牧伸二のバカっぱなしはまだまだ続いている。


ご馳走になったオムレツの味はまぁまぁだった。さっき食べたカニクリームコロッケも旨かったなァ...。
そんなことより、この居心地の悪さ。私は帰りたいのだが、オムレツ奢られちゃ、すぐ帰るわけにもいかない。

青江三奈は、そんな私の様子(表情)を窺うように、時折チラッチラッと、視線を向けてくる。私が楽しんでいるのか? 居心地が悪いのではないか?と、心配なのかもしれない。見た目はケバく派手なママだが好い人なのは間違いなさそうだ。

「お兄さん、このママ美人でしょ? 大宮の五月みどりだからね。」

「え? あはは!」

私は心の中で「うっ...」となった。
《違うだろ! 青江三奈でしょ? そして、あんたは牧伸二

牧伸二の冗談?に、あはは!と笑った私の反応を見て、青江三奈は安心したのか? とんでもないことを言い出す。

「カラオケでもしましょうか?!」

「あ、いいね、いいね♪」

おい おい おい!
カラオケ始まっちゃうのかよ?
勘弁しておくれよぉ~
おれは帰るんだもんね。絶対帰る!

面倒くさいことになったぞ、、と、困惑している私をよそに、牧伸二は喜々として歌詞本を捲っている。

時間を確認すると10時近くになっているようだ。


ちゃん ちゃちゃちゃ♪

聞き覚えのあるイントロが流れてきた。
厨房にいたおやじが、いつの間にか出てきて「ウォンチュー!」と、掛け声をかける。

( ワン ツー)
星の降る夜は あなたとふたりで
 踊ろうよ流れるボサノバ
   ふれあう指先ああ 恋の夜 ...♪

ん... ムード歌謡だな。
星降る街角?
敏いとうとハッピー & ブルーかよっ!
垢抜けねぇなぁ~ おい!
お願いですから勘弁しておくんなさい。自分はカニクリームコロッケに誘われただけなんです。

牧伸二の熱唱にリズムをとっている青江三奈と厨房おやじ。
茫然自失で心ここにあらず状態の私に視線を送ってくる青江三奈

もの凄い同調圧力

私は歌詞本を捲ったら負けだと強く思いながら、星降る街角のリズムに適当に合わせた。

何が悲しくて、見知らぬおやじの歌に合わせて、手拍子だの「ウォンチュー!」だのと掛け声かけなきゃならないのだ。 カッチョわりぃ~~
この牧伸二は突っかけサンダルなんだぞ。しかも、黒ジャージに首に手拭いだ。ここは狭いカウンターだけの店で無理ではあるが、ステップ踏みそうな勢い。恥ずかしいだろがっっ!

興に乗った牧伸二は、その後2~3曲歌うのだが、青江三奈は何を思ったか?奥の方から物騒なものを取り出してきた。

タンバリンにマラカス。。。

青江三奈はマラカスを私に渡すとニッコリ微笑んだ。

かっこ悪い...。
突っかけサンダルおやじの歌に合わせて、タンバリンとマラカスでリズムをとっている青江三奈と私。
こんな姿を家族友人知人に見られたら大変だ。恥ずかしくて、舌噛んで死ぬか、置き手紙を残して失踪するしか方法がないじゃないか(笑)。

ええい! もうどうにでもなれ!

不本意ながら、その後、私は青江三奈とデュエットで「男と女のラブゲーム」を歌う羽目になる。


そうこうして、時間は過ぎてゆく。

青江三奈牧伸二も、ちょっとありがた迷惑ではあるが、気の好い人達なのだろう。
恥ずかしい思いもしたが、ほっこりした気分にもなった。


背後のドア鐘がカランコロンと鳴った。2~3人連れのお客さんが入ってきたようだ。

時計は11時をとっくに過ぎている。
「それじゃあ、お勘定お願いします」
そのタイミングで、私はやっと帰ることが出来るのだった。

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「今日はありがとうございます。これに懲りず、また、来て下さいね」

青江三奈は情が深い人なのかもしれない。かなり、私に気遣っていたことは分かっていた。

「いいえ! 楽しかったです。御馳走さまでした」

奥の方から、牧伸二が「お兄さん、またね!」と、声をかけてくれた。

青江三奈は戸の外まで見送ってくれる。「じゃあ!」と言って、私は参道を大宮駅の方に向かって、てくてくてくてくと歩いていった。
しばらくして振り返ると、青江三奈はまだこちらを見送っていた。そして、手を振ってくれた。
少々照れくさくもあるが、その心遣いが嬉しくもあった。

ケバい女の人は情が深いのだ。

ありがとう、青江三奈
そして、突っかけサンダルの牧伸二さんも。


夜空には星が。
“ 星降る街角か?” と、私は呟いた。
今日は良い日だったな...。

大宮の夜は更ける。



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以上は、30年以上も前、実際に体験したことを、多少?の脚本を加えて記述しました。
その後、あの店には再訪したことはありませんが(現在は閉店)、独り酒場放浪は、このような思わぬ出会いがあるから楽しいですね。

大宮の夜は更ける。カニクリームコロッケの誘惑

20代後半の初夏だったと記憶します。


恐る恐る、、私はその酒場?のドアを開けると、そっと中を覗いた。
ドア鐘がカランコロンと鳴る。


「いらっしゃいませェ~~!」

そこには青江三奈がいた。


私はほろ酔い状態だった。
出生地である大宮で、一日の外回り仕事を終え焼き鳥屋で軽く一杯やった。
大宮にはめったに来ることはなく、なつかしさのあまり、ほろ酔い気分で氷川神社参道をぶらぶら散歩していた時のことだ。

ん!... 
カニクリームコロッケ
私はメニュー看板に書いてあるカニクリームコロッケに誘われ、その店を覗いたのだ。

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「いらっしゃいませ! こちらへ、どーぞ、どーぞ...」

ドア口で戸惑っている私なんぞお構いなしに、青江三奈は店内のカウンター席を勝手に案内した。
ガラーンとしており、客は誰一人いない。ちょっと気が引ける。



大宮氷川神社参道から脇道に逸れた場所にあるその店は、外見からは和風料理屋のようであり、普通のレストラン風でもあった。
中に通されたそこは、カウンターだけの狭いスナックのようでもある。
私は、ただ、カニクリームコロッケに誘われただけで、推しの強そうな青江三奈に席を案内されてしまったのだ。

“ 覗いた瞬間、目が合っちゃったんだからしようがない。断れないよな... ”

青江三奈はお通しを通すと、メニューを差し出してきた。

「あの、、生ビール下さい」
「はい、生ね?」
「それから、カニクリームコロッケって、外の看板に...」
「はい、カニクリームコロッケありますよ!」

青江三奈はニッコリ微笑むと、裏の厨房のおじさんに注文を伝える。

しかし...
化粧の濃い ケバいママだな。
目が合った瞬間、青江三奈かと思った。似ている、、そっくりだ!
明らかな付けまつ毛は、瞬きする度にパタパタしているようで、妙に艶めかしい(笑)。BGMに伊勢佐木町ブルースが聞こえてきてもおかしくない。


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「お客さん、今日はお仕事の帰りですか? 初めてですよね...」

「ええ、まぁ、、」

居心地が悪い。
青江三奈も、若い一見客にどう接していいのか?と、距離感をはかっているように感じる。何かと会話の糸口を探っているようなのだが、私からすれば “構わないで向こうに行ってくれ”
という心境なのだ。帰るタイミングを見計らっているのだから。

ここは普通の料理屋というより、和風スナックの類なのだろう。
カラオケもあるようだし、青江三奈のように派手なママの姿を見れば、どう考えても素人ではない。
駅からちょっと離れたこの手の店は、地元(近所)の常連で持っているような店と推測出来る。
私のような背広にネクタイ姿の若い飛び込み客は珍しいはずだ。
コロッケだけ食べそそくさと帰るのも、まるで逃げるようで、青江三奈も気分を害するのではないか?との気使いから、ビールの追加と、他にもう一品頼んだかもしれない。

「この辺りで生まれたんですよ。産業道路沿いに家があって、5才ぐらいまで住んでたんですよね...」

青江三奈との会話はぎごちないながらも、そんなようなことをぼつぼつと語ったような気がする。

小一時間ほどして時計を見ると、どうやら夜8時を過ぎているようだ。
話もあまり弾まず「お客さん、若いのに無口で真面目なのね...」なんて笑われる始末。私は初対面の派手な中年女との会話に気疲れを感じていた。
“ もうそろそろいいだろう...”
お勘定しようと腕時計に目をやった瞬間だった。


背後のドア鐘がカランコロンと鳴ると、牧伸二が入ってきた。


上下黒のジャージ姿。首にタオル(というより手拭い)を巻いており、汗をフキフキ、突っかけサンダルでパカパカと音をたてながら入ってきた。
その異様な姿にたじろいでいる私を横目に、一瞬、怪訝な顔をしながらも、牧伸二はカウンターの隅に座った。


やはり、ここは近所の常連で保たれている店なんだな。
じゃなきゃ、ジャージで来るか? しかも首にタオル、突っかけサンダルだぞ。まるで近所のタバコ屋に来たついでに寄ったような出で立ち。心の中で苦笑しながら、私はそろそろお勘定しようと財布の中身を確認した。

「今日は暑かったな! ママ、生ビールと枝豆ね」

牧伸二は声がでかい。
そして、青江三奈牧伸二は大声でバカっぱなしを始めた。
私は帰りたいのだが、二人のバカ話が止まらずお会計するタイミングが見つからない。場違い感がすごい。

カニクリームコロッケに誘われただけなのに...。

時間は9時になろうとしていた。
意を決して「お勘定お願いします」と、言おうとした時だった。
青江三奈牧伸二に耳打ち? 牧伸二がこちらに顔を向けると「どうも!」という感じで頭を下げてきた。
私もそれに釣られ頭を下げた。不覚にも愛想笑いを浮べてしまう。

「ママ、こちらのお客さんに生ビール追加してやってよ! あ、お兄さん、ここのオムレツ美味しいよ。ママ、例のオムレツもね」

「あ、いや、、、」

面倒くせぇ~! 牧伸二さんよ、馴れ馴れしいんだよ。

私は牧伸二の好意を断ろうとした。
すると、青江三奈は「あいよ!」なんて言いながら、牧伸二の伝票にチェックを入れ、厨房にオムレツの注文を通し生ビールを持ってきた。

迷惑なのに、迷惑なのに、、私はまたまた愛想笑いを浮べ「どうも、ご馳走になります...」と、内心を隠し牧伸二に向かって頭を下げた。
どこまでも人の好いおれ。

青江三奈に似たケバいママ。
牧伸二に似た、突っかけサンダルの馴れ馴れしいおやじ。

あんたら、おれの殻の中に無遠慮に踏み込むんじゃないよ。

面倒くせぇなぁ~~
早く帰りたいんですけど...。


・・・・・・・・・・・・・・・・


大宮の夜は更けてゆく。

それでも、まだ終わらない。

これから大変なことになってゆく。

次回(後半)に続きます。

健康診断

おれは長生き出来ねェな...。

今年、何年ぶりだろう?
10年近く経っているんじゃないだろうか?

健康診断を受けた。
シャレにならない。

糖尿病予備軍。
否、完全に...、否々よそう。
ちょっとまずい数値(具体的には言いたくない)をはじき出した。
こりゃ、死ぬな(笑)。


冗談はさておき、私の20代後半~40代半ばまでは無茶してたからね。

度々同僚との仕事帰りお酒大会。
飲んだあとのラーメン&餃子。
回転寿司30皿超え。
焼き肉なんて、私は体育会系でしたからね、一般人よりかなり食べた。
炭酸飲料、アイスクリーム、スナック菓子、、、塩だらけの食事。
ストレス、寝不足。こりゃ死ぬな。


それでも、40代始めまでは、たまに走っていたし、青梅マラソンにも二度参加した。そして、運動をする機会を失った。それでも飲み歩いていた。
完全に死ぬでしょ?

おまけに、50過ぎたら、あんなに嫌いだった甘い物が大好きになった。
死、、一直線ですね(笑)。


・・・・・・・・・・・


“酔って候” を気取ってみても。
現在、ウィークデーは殆どお酒を飲んでいません。

海藻類、きのこ、酢の物、豆、コンニャク、当然ながら野菜ね。いいんだってさ。米類(炭水化物)は朝しか食べていない。

バチが当たったんだね。

週末は少量ながら? 飲み食いしますよ。あったりまえじゃないですか!
カツ丼、鯛焼き食べたいのだ(笑)。

馬券当たったら、飲まずにいられない。あったりまえでしょ!


ずっと、腹八分目(七分目?)だから、何を食べても旨いんだよね。


ああ...
こんなこと書いたからって、遠慮しないで誘って下さいよ。
私は自制心の塊みたいな人間(笑)なので大丈夫です。

焼き鳥屋で生ビール3杯ぐらい。
もつ煮込み、ねぎま、ぼんじり、レバーぐらいは問題なし。
(要は連日でなければ良い)

コロナ騒動が終わったら競馬場に行って、その帰りに、またみんなで飲みに行きましょう。そして、競馬タラレバ話で盛り上がりましょう。
唐揚げ食べながらね(笑)。

それがなければ、なにが人生。。。


ああ、、私は神経質の方ですから、大袈裟に書いているだけで、実際は大したことないです。

徒然なるままに...

「悪を懲らしての家族愛」
あるいは、それに類するもの。

偽善の匂いがプンプンする。
文学、音楽、映画、スポーツ等の文化だけでなく、様々な分野、世間一般普段の生活中にも見られます。


感動の押し売りが大嫌いです。

唾棄したいほど嫌悪感を持っているのに、そんな世界に弱い。
私は偏屈者なので、常に世の中を斜に構えて見ていたいのだが、実は簡単に商業的感動に引っかかる。

《どうぞ泣いてください!》
《ハンカチを用意して下さい》
《感動をありがとう》

こんな通俗的で陳腐なものに引っかかってしまう自分自身に、苦笑どころか嘲笑すらしてしまうほどだ。

“ 流行には絶対乗らないぞ!”

と思っていても、知らず知らずそれに利用されているのが人間なのです。

具体的に述べるのは難しいのですが、コロナ禍の最中、その傾向は更に高まっているのではないでしょうか?
そんな気がします。


資本の放射を浴びて同質化した人間がこぞってこの凡庸な傾向(流行?)に拍手喝采、感動をする。
鬼滅とか...(笑)
それはもう批判的機能を失ったファッショ的世界です。


流行とはちょっと違うな。


同調圧力的な不気味なもの。
悪魔の囁き ...
〜 みんなに合わせなさい ~


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「戦争嫌い、流行嫌い、熱狂嫌い」で有名な、小説家藤沢周平氏が生きていたならば? 今の世を見て、どんな文章を書くでしょうね?


新型コロナウィルス再拡大中です。
細心の注意を払う必要がありますが、冷静に変な情報に惑わされず、、良い年末年始を迎えたいものですね。

さらば! アーモンドアイ

アーモンドアイは、あまり好きではなかった。
正直、彼女が走るレースは、いつも負けることを密かに期待していた。

その理由は?
ルメール騎手優遇? 使い分け疑惑による刺激の少なくなったG1レース。
勝てそうなレースしか走らせない? 巨大組織ノーザンファームによる、アーモンドアイ忖度。
最多G1記録を獲らせるためのお膳立て疑惑 等々...。

それだけだろうか?

強すぎる馬はファンも多いが、アンチも多いですからね。

自分が好きだった過去の名馬の名を挙げ「○○○を超えた!」なんて言われると、我慢ならないのがファン心理です。
史上最強牝馬論争はさておき、一時代を築いた不世出のスーパーヒロインであることは間違いないことで、昨日のジャパンカップでそれを証明してくれました。

 1着 アーモンドアイ
 2着 コントレイル
 3着 デアリングタクト

無敗の後輩三冠馬2頭を抑えての、文句なしの完勝です。
あれだけのレースを見せられては、認めざるを得ない。
そして、アンチだったことも忘れ、女王のフィナーレに畏敬の念すら覚えたほどです。

引退。
もう、彼女の走りを観られないと思うと、寂しくもありますね。
いつの時代も、ターフを去る名馬の姿は、とてもとても美しい。

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そして、虚弱体質だったアーモンドアイに携わる、全ての関係者の努力も称賛されるべきでしょう。
そうでなかったら、あれだけの記録は決して残せませんでした。


” アーモンドアイ”

その名の如く、クリッとした美しい瞳を持つ女王でした。




最後に寺山修司さらばハイセイコー」より引用でアーモンドアイに敬意を表します。


 『さらば アーモンドアイ 』

ふりむくな
ふりむくな

うしろには夢がない・・・

アーモンドアイがいなくなっても 

総てのレースが終わるわけじゃない

人生という名の競馬場には

次のレースを待ち構えている百万頭の 

名もないアーモンドアイの群れが

朝焼けの中で 追い切りをしている地響きが聞こえてくる

 思い切ることにしよう

アーモンドアイは ただの数枚の馬券にすぎなかった

アーモンドアイは ただひとレースの思い出にすぎなかった

アーモンドアイは ただ三年間の連続ドラマにすぎなかった

アーモンドアイは むなしかったある日々の

代償にすぎなかったのだと...