オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

追想 淀の刺客。

今週 6/28(日)は、春競馬の総決算宝塚記念が行われます。


思い出の宝塚記念は?
と、問われれば、ある悲劇の名馬を脳裏に浮かべながらも、他の馬の名前を挙げる人は多いと思う。
思い出したくない名馬の歴史。


悲劇の名馬?
ファンは彼のあまりにも残酷な結末を知っている。
ライスシャワーの壮絶な最期は、ファンの心にいつまでも突き刺さる小さな棘のようなものを残している。


競馬はギャンブルである。
競馬はビジネスである。
競馬は競技としてのスポーツである。
そして、競走馬は経済動物である。

その通りであると思う。
我々ファンも、そんな競馬という経済行為の一翼を担っている。
人間のエゴの犠牲になったライスシャワー
そんな罪の意識もあるのか?
多くのファンはライスシャワー宝塚記念を思い出したくないのかもしれない。


黒い刺客
淀の刺客
悲しきヒットマン

ステイヤーといえば?
一番最初にライスシャワーのことを思い浮かべる人は多いだろう。
彼は長距離レースに滅法強く、その舞台になる京都競馬場(通称“淀競馬場”)で数々の名勝負を演じてきた。

ミホノブルボンの三冠を阻止した菊花賞
メジロマックイーンの三連覇を阻止した天皇賞春。

歴史的名馬ミホノブルボンメジロマックイーンの大記録を尽く阻止したことにより、彼はヒール扱いされた。

刺客...
黒い刺客
淀の刺客

果たしてそうであろうか?
むしろ、私の目には巨大な敵を倒した彼に、ファンは拍手喝采を送ったように見えた。
悪役(ヒール)? 刺客?
とんでもない! 彼は多くのファンに愛されていた。

ライスシャワー菊花賞、そして、春の天皇賞を2度制している。
ミスターステイヤー! 長距離には滅法強かったのだ。


そして、運命の日が訪れる...。

1995年宝塚記念
例年は阪神競馬場で行われるこのレースだが、この年は阪神・淡路大震災の影響で京都競馬場で行われることになった。そう、得意の淀の舞台である。
距離は少し短かったが、期待するファンも多かったことだろう。


あの瞬間・・・。

「現実感がなかった... まるで悪い夢をスローモーションで見ているようだった...」
と、ある関係者がレース後に語った。

左前脚第一指関節開放脱臼、また、その下部は粉砕骨折
レース中に骨折した競走馬は数多いが、ライスシャワーのそれは正視できぬほど酷かったそうだ。
彼はもがき苦しみのたうち回った。その目は「痛い、痛いよ~ 苦しい!どうにかしてくれ!」と、必死に人間に助けを求めているようだったという。
医師たちはどうにも手の施しようがなく、その場で安楽死処分がとられた。
担当厩務員は動かなくなった彼を前に、声を上げて号泣したという。


テンポイントや、その後のホクトベガサイレンススズカ等々...にも感じたことだが、必死に走り続けターフに倒れた名馬たちの歴史に、まだまだ我々は大きな借りを残しているのかもしれない。

競馬は素晴しい!
ファンは楽しみ感動もする。

しかし、それは、多くの名馬の犠牲のもとにあるのだ。
残酷でもある、、ということは厳然たる事実なのだ。


ライスシャワーの物語を追想する度、そんなことを思うのです。