オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

幻馬伝「幻の最強馬列伝 ①タニノムーティエ」

以前『名馬 Memories』にて、王者編、怪物編、天才編、アイドル編を書きましたが、今回(から)も懲りずに独断と偏見による「幻の最強馬」のことを書いてみようと思います。
記録、データ等を基にしているわけでなく、あくまで私の主観、印象になりますので悪しからず。

幻の最強馬?
よく競馬ファンの間で議論される「幻のダービー馬、三冠馬 等々...」の類ですね。つまり、“ もし○○○ならば、あの馬は○○○だ” という、タラレバで語られる馬のことです。

昭和のシンボルルドルフ、平成のディープインパクト等は、偉大なる記録を残し、当時のファン、後世のファンに称賛されますが、それ以上熱く語られることは少ない?
それは彼らが、その有り余る才能を最大限に発揮して記録という事実を残したから。功成り名を遂げた名馬のストーリーは完結しており、想像力の介在する余地がないからだと思う。

ところが、競馬史の中には、とてつもない才能を感じさせながらも、故障等の様々な理由によってターフを去らざるを得なかった馬が度々出てきます。
事実(記録等)を残し無事に去った名馬と違い、彼らは実現されなかった可能性を置いて去っていったのです。
ファンはその「可能性」に想像力を掻き立てられ幻想を抱くのです。

ファンは、S・マックイーンや、P・ニューマンより、J・ディーンの方に幻想を抱き熱く語りますからね?
ん! 例えが悪かったかな?
(私はS・マックイーンが一番好き)


幻の、、そう、幻想を抱かせる馬は?

「初出走以来10戦10勝、目指すダービーに勝って忽然と死んでいったが、あれはダービーに勝つために生まれてきた幻の馬だ」

作家吉屋信子さんが、毎日新聞に寄稿したトキノミノルへの追悼文はあまりにも有名です。
幻の馬という形容はこの馬から始まったのかもしれません? 小学生だった頃、この追悼文を初めて読んだ時は想像力をかき立てられましたね。
あの当時のファンは、史上最強馬といえば、クリフジ、シンザンタケシバオー、そして、トキノミノルの名を挙げる人が多かったんじゃないかな?

さすがに私も、トキノミノルをリアルタイムでは観ていない。
私が生まれる7年前に、ダービー馬となり忽然と死んでいった大昔の名馬。

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では、私の知る幻想を抱かせる馬は?

何度も述べていますが、私が競馬に興味を持ち始めたのは1969年辺りから。
当時私は小学5年生であったと思いますが、最初に好きになった馬は、菊花賞を豪快に勝ったアカネテンリュウ
その一つ下の世代に、アローエクスプレスという関東の人気馬がいた。
デビュー以来6連勝。私はこの馬の快速ぶりにも夢を持った。
当時、アカネテンリュウの次に好きだったのがアローエクスプレスでした。
ところが、関西から不気味な馬が東上してくる。憎きタニノムーティエ
この東西最強馬同士の、AT対決は長くなるので触れませんが、結果としてタニノムーティエは、東上後、弥生賞スプリングSを連勝し、皐月賞日本ダービーの2冠に輝く。

タニノムーティエこそ、私が幻の最強馬と感じた最初の一頭。

2冠に輝いたのだから、幻の...という形容はどうかと思いますが、後の2冠馬ヒカルイマイカブラヤオーミホノブルボンのような派手さはないが、きっちり勝つ。奥の深さは前記3頭よりあるように感じました。(トウカイテイオーは、また別)

戦績を調べると異常に過酷なローテ。
それが影響したかどうか?は、分かりませんが、 ダービー勝利後、夏を無事に越すことは出来ませんでした。
喘鳴症(喉なり)。そして菊花賞
結果は11着と惨敗ですが、淀の3000完走するのさえ危ぶまれていたタニノムーティエが、第4コーナーで一瞬上がっていった時の地鳴りのような大歓声。

あれは、涙なしには語れません。

あのような状態で、ファンもそれを知っていたのに、彼の単勝馬券はそこそこ売れていた。それは、ファンの彼への餞別代わりだったのでしょう。

もし、タニノムーティエ喘鳴症にならず、無事に夏を越していたならば?
シンザンに並ぶ5冠馬となっていたかもしれません...。
弟のタニノチカラの活躍を見ても、彼の奥の深さも相当だったはず。
私はチカラよりムーティエの方を評価しています。幻の5冠馬決定(笑)♪

タニノムーティエの翌年、ヒカルイマイという馬が春の2冠に輝きます。
この馬のダービーでの伝説の追い込みは痺れましたが、弱点もあり、タニノムーティエほどの奥深さは感じませんでした。魅力はありましたけどね。

そして、いよいよ、花の47年組。
あの馬がやってきます。

次回幻の最強馬列伝イシノヒカル

尚、次回(来週?)更新は別ネタです。