オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

タコ タコ 上がれ!

タコ社長のことを思い出している...。


『葬式無用。弔問供物辞すること。生者は死者のため煩わさるべからず。平成9年2月26日 太宰久雄

タコ社長こと、太宰久雄さんの遺言。
これは、朝日新聞(天声人語)等でも紹介されましたね。

男はつらいよシリーズ。

『俺のやせ細った死に顔を他人に見せたくない。骨にしてから世間に知らせてほしい』渥美清

シリーズ末期、寅さんこと渥美清さんは、闘病の中、かなり無理をして仕事をしていたのは知られることですが、それは渥美さんだけではなかった。
渥美さんと太宰さん。二人の遺言、共通するものがありますよね? ん、、ちょっと違うかな...。

渥美さんの素顔は、寅さんとは正反対?で、公私混同を嫌い、私生活を明かさず、他者との関わりを極力避ける孤高な性格だったと言われる。
太宰さんも、バイタリティー溢れる賑やかなタコ社長とは違い、その素顔は大変シャイで人前で話したり演技するのは苦手だったようです。
隠遁生活? そんな性格が、二人の遺言には、如実にあらわれているように思えます。


タコ社長は「中小企業経営者の苦労がわかってたまるか! 」と、よく口にしていました。経営する実際の朝日印刷は零細企業ですよね?
「タコタコあがれっていうもんな...」
そうやって、寅さんにからかわれる場面がありましたね。

🐙タコタコ上がれ 天まで上がれ🐙

これ、コロナ禍の現在。
笑い話になりませんからね。

新型コロナウイルスの感染が再拡大している。地域によっては1日当たりのコロナ感染者数が過去最高を更新しているそうだ。
どれだけ深刻なのか? 情報が錯綜して私には分からない。
感染による健康面が心配なのは勿論のこと、経済面の不安も大きい。
あまり深刻に考えないようにするも、ジワリ.. ジワリ... と、不気味な影が背後から襲ってくるような感覚。


京浜東北線 川口駅から本町通り沿いにあった大衆食堂N

京浜東北線 蕨駅近くの立ち飲み屋Y

北千住駅近くの角打ち酒場K

みんな、みんな、、このコロナ禍の影響で潰れてしまった。
20代、30代の頃から通い、今でも思い出しては年に数度顔を出していた思い出深い店々。

個人営業の飲食店。
外出自粛状況下でやっていけないところが多いという。当たり前だ。
腕のいい料理人が個性ある料理を出す店が潰れ、無機質なチェーン店ばかりになったら?
その道一筋でやってきた、苦労人で実直なタコ社長のような人が苦労するのだ。 ふざけちゃいけない!

タコ社長は個人事業主のシンボルだ。
否、庶民の象徴と言ってもいい。
昭和の昔には、タコ社長のような人が結構いましたよね?
いくら相手がウイルスとはいえ...。
このような弱い立場の者が犠牲になるのはあまりにも残酷で悲しい。

“ タコ タコ上がれ!”

と、飲食店に限らず現代のタコ社長。苦労が報われてほしいものです。


f:id:okeraman:20201120035046p:plain


太宰久雄さんは、入院先の病院で、渥美清さんの死去の報を聞いたという。
その時、太宰さんはベッドの上で唇を噛みしめ押し黙ったままだったと言います。

それからは・・・。

誰にも会おうとせず、「寅さんとのお別れの会」以降は見舞いも断っていたという。そして、あの遺言である。

葬式無用。
弔問供物辞す。
生者を煩わせず。

これを「周囲に対する気遣い、太宰さんのやさしさ、超然とした最期...」等と言う人がいる。
果たしてそうなのだろうか?
私はそんな単純なことではなく、もっと他に何かあるのではないか?
と、思うのは気のせいなのかな。。。


太宰久雄さんは、演じたタコ社長の底抜けに明るい笑顔の裏に、私生活では大変な苦労人で悲しい思いもしている。それに触れるのはあまりに切ないので言及はしません。


コロナ後の社会。

ライフスタイルが変わるでしょうね?
きっと、処世術に長け要領の良い人が生き残り、タコ社長のように実直で不器用な人が社会から落ちこぼれるのでしょうね?
クソみたいな社会ですね(笑)。


寅さんとタコ社長の取っ組み合い。
お互い遠慮なしでした。

でも、あれは戯れなんですよ。


タコタコ🐙上がれ!