オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

ホッピー通り☆泥沼男

最終レース。
おれは期待の馬券をポケットに突っ込むと、その酒場に入った。

「ごめんなさいよ! 生ビールと枝豆もらおうかな..」

「はい、生ビールと枝豆ね!」

しかし、テンションの高い店員だな。

おれは新聞を広げると、競馬中継をやっているテレビに目をやった。
生ビールを喉に流し込む心地良さ。
枝豆はビール最高の友である。

“ もう、そろそろ大きな馬券を的中させてもいい頃だよな ... ”


最終レースが始まった。

予想通り軸にした馬が来た。
そして、狙っていた人気薄⑧番の馬が逃げて逃げて粘り抜いている。
おれは心の中で “このまま、このまま” と、絶叫していた。
万馬券だぞ! やった、やった~!

その時である。
大外から一頭すっ飛ん来る馬、発見。

( 」`Д´)」<おおおおお!

ギャ━━━Σヾ(;`・Д・)ノ━━━!!!!


茫然自失。
無意識のうちに、店内で叫んでしまったようだ。
ハズレ馬券を握りつぶし、生ビールのジョッキが震えている。
気を取り直し、周囲を見廻すと、皆こちらを見ている。
目が合いそうになると、その目を逸らすやつがいる。クスクスと、笑いを堪えている女もいた。
恥ずかしい、、いたたまれなくなったおれは、目立たぬようそっと店を出た。枝豆しか食ってねぇ。

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一瞬の夢だった。
あの馬さえやって来なければ...。
それもこれも、鞍上福永祐一のせいなのだ。大人しく後ろのほうにいれば万馬券、150倍以上はついていたはずで、5百円が7~8万円に化けていた計算だ。
福永祐一くん。
己はおれをおちょくっているのかい? おれが買えば馬群に沈み、買わないと馬群を鋭く抜け出してくる。恨みでもあるのだろうか?

夕暮れの浅草ホッピー通りを、心の中で、福永祐一を罵倒しながら、夢遊病者のようにおれは歩いている。

万馬券的中なら、今頃は浅草すしや通りで、まぐろ、うに、イクラ三昧だったはずだ。しかし、福永祐一が意地悪したおかげで、おれは安酒場で焼き鳥と胡瓜を肴にホッピーを飲むはめに。


悪酔いしたのだろうか?
気が付いたら終電近くまで飲み歩いていたようだ。
越谷に向けて浅草は始発駅。座れてしまうんですよね。酔に任せて、おれは心地好い眠りに入ったのだろう。

「北春日部、終電です!」

駅構内放送に酔いが覚めた。

やばい! 越谷を通り過ぎた。

おれは急いで戻るため、ホームを走り階段を駆け上がった。

「一番線、上り最終、出発します!」

間に合わなかった。

呆然と一番線ホームから、おれは遠ざかる電車を見送るのであった。

財布の中身は千円もないだろう?
タクシー代はない。


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以上は限りなく事実に近い妄想です。
馬券泥沼男なんて、大抵はこれに近い経験をしていると思いますよ。
馬券は希望と期待です。
自信を持って投票した馬券なんて一度もないですね。
競馬に絶対なんてない。
絶対と思ったのは、キタノカチドキ皐月賞ぐらいかな?
でも、そんな馬券を買ってもリターンは極少。所詮、万馬券なんてドリーム、運が左右する世界なんです。
(資金力のある人は別)
それでも、どんな泥沼にハマろうと、競馬バカはそれが楽しいんですよね。

新型コロナ自粛騒動で、しばらく競馬場にも浅草場外にも行ってないな。
どうも、私はネットと相性が悪いらしく、ネットで買うようになって回収率が惨劇になってきた(笑)。

早く、正常な世の中になって、皆さんと競馬場で逢いたいですね。

福永祐一騎手、ごめんなさい(笑)。