オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

ニャロメ!

部屋の窓をガラッと開ける。

前の家の屋根に一匹の猫がいる。
猫はビクッとしたように、こちらに怪訝そうな目を向ける。

“ ニャロメ、勝負だ!”

視線がバチバチ交差すると、猫とのメンチの切り合いが始まるのだ。
私は猫を睨みつける。猫も目を逸らさない。視線を外した方が負けなのだ。

《猫はノンビリ自由で羨ましいな...》
そんなことを思いながら、私の方から目を逸らすことがある。

《バカな人間に睨みつけられてるな...》
そんな表情で猫の方から目を逸らすこともある。

私は勝手に屋根の上の猫のことを、心の中でニャロメと呼んでいた。

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そんな屋根上のニャロメとの睨み合いのことは、去年もブログでちらっと書いたように記憶する。

その屋根の家の飼い猫ではなく、多分、野良猫だろと思うのだが、ニャロメとの視殺戦は数年続いた。
日常の当たり前の光景になっていた。


ニャロメが消えた・・・。


いつ頃からだろうか?
この3月?4月? もう、半年にもなる。

ニャロメは何処へ?



ニャロメ
ケムンパス
べし

赤塚不二夫マンガに登場する愛すべきキャラクターである。
この3匹は、人間の言葉を話す恐ろしく知能の高いネコ、ケムシ、カエルのトリオで、主に原っぱの土管の中に生息する。
ネコのニャロメに至っては、人間の女の子に恋心を抱き、花束を持ってプロポーズまでしてしまう究極の知性の持ち主。

ニャロメは、かつて、磯野家のタマと共に日本で最も有名なネコでありました。

「こんニャロメ!」
と、負けん気が強く権力に逆らうニャロメは、当時、学生運動のシンボルとして祀り上げられたそうです。
目ン玊つながりの本管さんとの抗争劇は、まるで、機動隊と学生の様。
どんなに権力に踏み潰されても、不屈の闘志で立ち向かうニャロメの生き様、その姿に自らの反逆心と挫折感を重ね合わせ投射していたのだろうか?

マンガの中のニャロメは酷い扱いを受けている。
あの虐待シーンを描くのは、現代ではかなりの批判が予想され不可能だと思う。赤塚不二夫が本当に伝えたい裏メッセージがあると思うのだが..。

コンビニ郵便ポストを台に、酒盛りしているオッサン3人組をたまに見かける。迷惑な行為ではあるが、彼らを見ていると、ニャロメ、ケムンパス、べしのトリオを思い出す。

ニャロメは今はない学生運動のシンボルというより弱者の象徴?
否、今の世は格差社会
貧困層が多くなった日本、庶民の象徴なのかもしれない。
おい!小泉父、竹中、安倍、その他。
ふざけちゃいけない。

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ところで、同じ赤塚不二夫マンガの中で、ニャロメとイヤミの共演はなかったよね? 名コンビになると思うのだけど、見てみたかった。

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消えた屋根上の猫。
ニャロメは、もう戻ってこないような気がする。

あの大きく欠伸をし、伸びをする姿が懐かしい。
私は屋根上のニャロメに癒やされていたのだ。

ノラや』での、内田百間先生の気持ちが良く分かる。

もう一度、視殺合戦をして《変な人間がいるニャア~》という目でバカにされたい。

戻ってこいよ、ニャロメ!!