オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

楽しい遠足(前)

今日は楽しい遠足。

伊藤君はクラスの中でも個性的でひょうきんな性格。ちょっとした人気者である。目的地に向かう観光バスの中でも落ち着かなくお喋りが止まらない。

伊藤君の隣は彼と気が合う井上君である。このコンビは伊藤君のジョークに井上君が調子を合わせたり突っ込んだりする名コンビなのだ。

バスはしばらく走っていた。

今まではしゃいでいた伊藤君が、なぜか口数が少なくなってきた。井上君は伊藤君の異変に気付き「どうしたんだよ! オシッコしたくなったのか?」と突っ込む。それでも伊藤君は曖昧な笑みを浮かべるだけで、いつもの彼とは様子が違う。心なしか顔面蒼白のように見える。全然喋らなくなった。

「伊藤君、バス酔いなんじゃない?」

クラスの女子がそう言葉をかける。

「う、うん...」

「なんだ! おまえ、バス酔いか?ゲロすんなよな...」と、井上君。

すると、伊藤君は井上君の方に顔を向け口を抑えながら「うぷぷ、、、」

次の瞬間、伊藤君の口から吐瀉物がいきなり噴射された。
それは一直線に井上君に hit directlyしたのだった。
阿鼻叫喚! 車内に甘酸っぱいような異様な匂いが漂い騒然となった。

これは日本全国の小中学校、どこにでもある遠足の光景だと思います。
ガキはギリギリまで我慢するものだ。
私は噴射boyの伊藤君より、吐瀉物を浴びた井上君のその後が気になる。
着替えは持ってないだろう? せっかくの楽しい遠足が地獄になる(笑)。


遠足で楽しいのはお弁当の時間。

私は遠足でも運動会でも何でもお弁当を持参するのが嫌だった。
クラスのオシャレな女子なんて、色とりどり鮮やかでビックリするようなお弁当を持ってきてましたね。赤ウィンナーをタコの形にしたり、白ご飯の上に海苔で❤マークがあったり。
それに比べ、私のお弁当は唯の梅干し入りの塩むすび山下清じゃないんですから、いい加減にして下さい。
ちょっといい時でもイナリ寿司とか海苔巻きの太巻き。それに私の大嫌いな桜でんぶが入ってるもんだからいい加減にしてくれよう~~!と思ったね。

まぁ、私のことなんていいのです。

遠足でのお弁当。

グループで囲んで食べていると、一人だけ皆から距離を取り、絶対に弁当の中身を見られないように蓋で隠し俯きながら食べてる奴がいる。

山本君は絶対に弁当の中身を見せないことで有名である。

「おい山本! 弁当の中身見せろよ。なんで隠してんだよ...」

クラスでも威張っている方の、肥満児の原君である。このデブは底意地が悪くて私も大嫌いだった。

「いいよ...。向こうへ行っててよ」

必死に隠そうとする山本君。
これだけ隠すということは、何か理由があるはずなのに、デブは無慈悲でしつこい。本当に嫌な奴なのだ。
見せろ! 嫌だ! で悶着していると、山本君が原君に「しつこいよ!」と、半分キレかかって言った。
その言い方がつっけんどんに感じたのか? デブは山本君の胸ぐらを掴み、強引に弁当の中身を見ようとした。
山本君も完全にキレたのだろう。自分よりずっと大きいデブに飛びかかる。
それは殴り合いに発展しましたね。

古き良き時代でしたね。
だって、弁当見せろ見せないで殴り合うなんて、なんて愉快なのでしょう。おまけに、女の先生でしたが叱られてふたりともシュンとしてやんの(笑)。


↑(注)
この画像は今朝の餃子弁当。
コンビニ餃子にご飯をちょこっと。


コンビニがある現代にはあまりいないと思いますが、あの時代(昭和40年代)には弁当を隠す子どもは結構いたと思います。家庭の事情が垣間見られて、子どもにとっては残酷だったのかもしれませんね。山本君のお弁当の中身は? 記憶がないのです。

ちなみに私が他人の弁当で一番笑ったのは、高校時代のハンドボール部の奴でしたが、白米の上にマグロブツが数個乗っかってるだけ。しかも醤油忘れてやんの(笑)。
何でも朝練に間に合わないから自分で作ったんだとか。そう自慢げに言ってましたが、それ、作ったんじゃなくご飯に乗せただけだからね。

「刺し身なんか生物で腐るだろ!」

「それ、前の日の父ちゃんの酒の肴じゃねーの?」

そんな風に突っ込まれ大笑いしたのを憶えています。

すばらしい!

さて、遠足といえば...。
あの迷子事件に触れないわけにはいきませんが、長くなるので続きは次週?