オケラ街道の奇人

令和という斜面に踏み止まって生きる奇人。自称抒情派馬券師、オケラ街道に潜む。

カラス。

 

早朝。
おれは両手にゴミ袋を抱え、つっかけサンダルでスタスタと自治会のゴミ集積場所に向かう。目の先に黒い物体がピョンピョン飛び跳ねている。ゴミ溜めから覗く残飯を狙う数匹のカラスのようだ。
おれは奴らを刺激せぬよう静かに集積所に近付いた。奴らも変な人間がやってきたので警戒しつつも無関心を装っているようだ。こいつらは頭脳が高い。遠回しに横目でチラチラとおれを観察している。

おれは静かにゴミを箱に収めると蓋を閉めた。チラッとカラスに視線を送りそっとその場を離れた。その様子を見て、奴らは ”これは害のない人間みたいだ…“ と、判断しただろうね。
その場を離れたおれを余所目に、カラスどもは安心したようにゴミ箱の上に戻る。

数メートル先でおれは立ち止まった。
その場でクルッと振り返ると、おれはつっかけサンダルをパッカパッカ鳴らしながらカラスに向かって突進した。
奴らはカラスのくせに鳩が豆鉄砲喰らったような顔になり慌てて飛び去った。

あははは♪
これだからカラスは面白い。
なんて愉快でユーモア溢れ可愛い生き物なのだろうか。奴らは鳥獣保護法の対象で飼うことは出来ないが、賢くて人間にも異常に懐くと何かの本で読んだことがある。
そんな知性ある誇り高きカラスさんを私のようにからかってはならない。
頭いいぞ!  意地悪された人間の顔を覚えているらしいから仕返しされちゃうよ。

カラスに対する悪戯で苦い思い出があります。あれはカラスの繁殖期だったのでしょうね。ある通りの数本の木々が集まっている場所。道行く人々に向かって、木の上から通常より高い声で「カアカア!」と騒がしくが鳴いていた。

 


これは明らかに威嚇行動で、こういう時の奴らを刺激しては絶対にダメ。
あの時、あまりにもカラスが騒がしいので立ち止まるとおれは木を見上げた。

おれはカラスを甘く見ていたのだ。

まるで猛禽類が獲物に飛び掛かるかのように、2匹(夫婦?)のカラスが羽ばたくと背後からおれに向かって滑空してきた。おれは振り返り手荷物で応戦する。
(カラス如きに舐められてたまるか!)
奴らはすぐに退散すると思われたが、執拗に何度も何度もおれに襲いかかる。
その執念に恐怖を感じたおれはそれから逃げるように遠ざかった。それでも、巣からかなり離れても追いかけてくる。そして這々の体で逃げ押せたのだ。

おれは反省しましたね。

奴らにとって、自分らより遥かに大きな人間に威嚇攻撃するのは余程の覚悟。
それもこれも雛、つまり我が子を守るための必死の行動なのでしょう。
(そのくせ、当然ではあるがツバメの雛や卵を狙っていやがるけどね)

我が身の危険を顧みず、我が子を守ろうとするカラス。
それに比べ、児童虐待?やら我が子殺しのニュースを見る度、こいつらカラスより莫迦で価値のない親 (人間)だと思う。
カラスどころか、カマキリだって卵を守るためならカマをもたげ、人間や猫に向かってファイティングポーズを取るぞ。

昆虫以下で恥ずかしくないのか ?莫迦

カラスは賢くて可愛いよね?
黒くて怖いとか気味が悪いと嫌う人は多いけどおれは好きだ。
カラスの生態を研究してその調教によっては警察犬ならぬ警察鴉誕生の未来があるかも。尾行出来そうだもんね?